東京海洋大学について
練習船「汐路丸」
受付状況
2022年度の申し込み受け付けは終了しました。
(申込期間外における緊急の申し込みについては、下記お問い合わせ先にご相談ください。)
練習船汐路丸
見込まれる教育効果
国際海事機関における電子ナビゲーション戦略等に代表されるように、安全かつ効率的な海上輸送のために、船舶運航のIT化が進んでおり、これに対応するための学生への教育が必要であり、海洋BB(Broad Band)通信、電子ナビゲーション、高度運航制御、高度船舶管理システム等を用いた練習船教育により、実体験教育ができる。
船舶運航には多くの燃料が必要であり、また、舶用機関の排気ガスの排出により大気汚染、海洋汚染を生じる可能性がある。しかし、先端運航技術を用いて船舶の効率的運航?運用が行われれば、消費燃料、CO2排出量を低減し、省エネルギ-、環境負荷低減を実現できる。本学所有の汐路丸を活用し、本学学生及び利用大学学生に先端運航技術を用いたグリーン&イノベーション教育を行い、高度職業人の養成が行われれば、それら人材を海運会社?舶用機器メーカーなどの海事関連企業や海事教育機関、海事関連官庁等に送り出すことにより、消費燃料、CO2排出量低減を考慮した船舶運航が実行され、低炭素社会実現に寄与できる。
施設の利用計画
汐路丸のすべての実験航海を原則として共同利用に提供する。共同利用の形態は「単独航海」、実験航海の余席利用の「混乗航海」とする。実験実習は、本学学生と利用大学学生に対して同等?同質の教育の機会及びその効果を保証する。また、本取組は、他大学が実習等を練習船を利用して行い、単位認定を伴うことを原則とする。
申請施設を利用して行う実験演習は以下の通りである。
(1)航海計器を用いた航海当直実習
船長役、左右舷見張り当番、操舵当番、CPP当番の5名でチームを構成し、あらかじめ決められたコースに沿って船を運航することを実習する。目視による見張りや、レーダ等の航海計器を利用することによって、他船の動向を観察し、接近?衝突の危険を未然に防ぐとともに、自らも他船の障害とならないように操船することが重要である。この実習で修得することは航法、法規、航海計器の操作など多数あるが、共同作業によって目標を達成することが最も重要な要素となっている。すなわち、船長役は的確な命令によって各当番から必要な情報を得るとともに必要な操船を指示する必要があるが、同時に、各当番は単に命令に従うだけではなく、船長役が行うべき操船を十分に理解?予測して、必要となる情報をタイムリーに提供することを心がける必要がある。
また、乗船時のみではなく航海当直実習はその準備(座学)段階においても非常に学習効果が高い。すなわち、実際に通航する海域の航法、法規、変針点等を事前に確認し、実際の操船を円滑に行い、不測の事態に対して余裕を持って対応できるよう入念に準備する必要がある。これは、計画を立案する能力とそこに潜む課題を発見する能力を習得するために非常に有効である。
(2) 計測機器を用いた操縦性能試験
試験項目は旋回試験及びZ試験であり、IMO(国際海事機関)の操縦性基準にも取り入れられている実船試験法である。学生は操舵係、方位計測係、速力計測係、舵角計測係、ストップウォッチ係に分かれて実際に汐路丸を操船してデータを計測する。この実習では航海当直実習と同様にチームワークが重要であるだけではなく、知識としての操縦性能に加えて、操縦運動に伴う加速度等を体感することができるため、学生が実験内容を理解しようとするモティベーションは非常に高い。汐路丸では教育効果を高めるために、コンピュータ計測は敢えて行わず、学生自身が各計器を読み取ってノートに記録する方法を取っている。実験データの解析では、IMO操縦性基準との比較検討に留まらず、図式解法による操縦性指数(旋回性指数および追従性指数)の推定まで行うことにより、船舶操縦性理論の理解を促している。
(3) 省エネルギーを目指す機関特性実験
汐路丸では、船速、燃料消費量、推力及び主機関を循環する潤滑油、冷却清水、海水などの温度を測定でき、これら諸量より機関効率が得られる。また、機関効率は船速、プロペラピッチ、風、波、潮流等によって異なるので、可変ピッチプロペラを有する汐路丸では、船速、プロペラピッチあるいは風、波、潮流等の機関効率へ与える影響について考察できる。
この実験は、現在、海洋工学部、海洋電子機械工学科の「船舶実験」で行われており、機関特性実験を通して知り、効率的な運航について考える場を学生に提供している。機関効率の高い運転を心掛ければ、燃料消費量を低減し、運航経費を抑えることができるばかりでなく、主機関の排気ガスを削減でき、政府の掲げる温室効果ガス削減に寄与する。共同利用では、学生は機関効率を求める実験を行い、環境負荷低減及び経済的観点から船舶運航の最適運転条件について考察する。これらの実験を通して、省エネ、環境汚染防止に配慮した機関運用のできる海上技術者の養成、また、船舶運航上の省エネ技術、環境技術の研究開発ができる人材養成を行う。
(4) リアルタイム制御システム実験
東京海洋大学海洋工学部では2008年から2010年にかけて特別経費プロジェクト分「情報技術(IT)を用いた船舶の先端運航科学技術の開発研究と人材養成」として教育改革事業に係る支援を受け、海洋ブロードバンド通信、電子ナビゲーション、高度運航制御、高度船舶管理システムなどの開発研究を進め、それらを実際に用いた教育システムとカリキュラムを構築し、実際の学部教育に利用している。共同利用拠点として提供できる教育内容は本学の「海事システム工学実験演習」の授業科目で行われているものであり、学生は制御系設計に広く利用されているソフトウェアMATLAB/Simulinkを利用して制御設計実習を行う。
まず、学生は教室地区でノートパソコンを用いて制御設計を行い、制御設計用シミュレータによって安全性と有効性を充分に確認する。次に、開発した制御プログラムを持って汐路丸に乗船し、実船実験を行うことになっている。汐路丸にはMATLAB/Simulinkを利用できるリアルタイム制御システムが搭載されているので、学生はサーバコンピュータにノートパソコンを接続するだけで自分のプログラムを実行することができる。練習船を利用した制御実験演習の効果は、学生の取り組むモティベーションの向上に現れており、問題解決のために徹夜で作業する学生も珍しくはない。これは、「社会人基礎力」の「考え抜く力」を養うために非常に有効であることを示しているといえる。
(5) 先端ナビゲートシステムを用いた環境に優しい船舶運航実験演習(NPO法人による実施)
本システムの中枢部は東京海洋大学海洋工学部に設置されており、練習船汐路丸、陸上レーダ局、陸上AIS局、京都大学気象支援サイトなどから収集した各種情報をデータベース化し、複数のモニタやパソコンに情報表示するものである。大型モニタには、東京湾における船舶情報の表示ができ、湾内の船舶動静が現況把握できるリアルタイム表示や、過去の状況を再現表示できるプレイバック表示機能をもち、汐路丸の航跡確認や海上交通流の変化把握として授業にも使用されている。汐路丸にはレーダ画像や航海?機関情報を衛星経由でリアルタイム通信するシステムが搭載されており、TV会議機能を用いて陸上とコミュニケーションを取ることができる。したがって、乗船しての実習だけではなく、船上と陸上の二班に分かれての実習や陸上のみでの実習を効果的に行うことが可能である。
実施可能な実験演習内容としては以下のものが考えられる。
- 海上交通安全性評価
東京湾内の海域別、時間帯別の船舶交通の混雑状況をモニタし、船舶同士の見合い関係から接近?衝突の危険度を種々の角度から評価することが可能である。 - ウェザールーティング演習
風、波、潮流等のリアルタイム計測結果や気象データベースによる予測結果に基づき、汐路丸の燃料消費量や目的地までの航海時間を予測?計測する実験を行う。
申込
関係規定等
- 東京海洋大学学則(関係部分).pdf
- 東京海洋大学練習船汐路丸共同利用規則.pdf
- 東京海洋大学練習船汐路丸教育関係共同利用運営協議会規則.pdf
- 東京海洋大学練習船汐路丸教育関係共同利用実施要項.pdf
お問い合わせ先
教育関係の共同利用について
東京海洋大学越中島地区事務室教育支援係
電話:03-5245-7320
ファックス:03-5245-7332
メール:e-kyomu@o.kaiyodai.ac.jp
※ 調査研究等の目的の場合は、関係教員に御相談ください。