海からの声を伝える?々
海からの声を伝える?々
- Q 所属する学科はどんな学科ですか?
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- 広く水の中に暮らす生き物(水生生物)を対象として「生命科学」と「資源生物学」を教育?研究しています。 具体的には、これらの生き物について、遺伝子のレベルから、細胞、個体、群れ、生態系のレベルまでを学ぶことができる講義や、それぞれの生き物と環境との関係についてを学ぶ講義があります。また、学んだ内容をさらに深めるためのフィールド実習や実験も充実しています。 このような講義や実習?実験を通して、水生生物を守りながら、これらを利用していくための方法と考え方を習得することを目指しています。
- Q どんな授業を担当していますか?
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- 1年生の基礎科目である生物学や、3年生の集団生物学実習などを担当しています。集団生物学実習では、実際に千葉県館山市の海辺にある水圏フィールド教育センターに1週間滞在して、野生に生息する海洋生物を採集し、その生息域における分布や行動様式、成長などについて様々な手法を学び、解析します。
- Q どんな研究をしているのですか。その研究のおもしろさは、どんなところですか?
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- 地球温暖化や気候変動、海洋汚染物質などの様々な人為的環境ストレスが野生魚の繁殖機構に与える影響を調査しています。特に環境変化に敏感なトウゴロウイワシ類を指標種に用いて、実際に世界中のフィールドに赴いて捕獲調査を行い、どのような異常があるのかを調べています。
日本国内はもとより、南米や北米の研究者と一緒に現地調査を行っていますが、ところ変われば漁法やルールも変わり、そこに生息する魚種も当然異なるので、網を入れるときは毎回とても新鮮でエキサイティングです。時には熱帯魚屋さんでみたことがある魚が網にかかってくることもありますし、全く空振りのときもあります。
また、調査対象種の繁殖機構に異常が見つかった場合には、原因特定のためラボにて様々な環境ストレス条件下で飼育実験を行います。私たちは孵化直後の仔稚魚に焦点を絞っているため、飼育実験を行うためにはまず、繁殖期の親魚を捕獲し、人工授精をして受精卵を得るところから始まります。全く飼育方法が確立されていない魚種の仔稚魚の長期飼育は、餌の確保や原因不明の大量斃死など苦労が多いですが、生き物好きの学生さんたちと試行錯誤しながら、生じた問題を一つずつ解決していきます。フィールドで得られた結果をラボで検証し、その結果、自分たちの仮説が証明された時には、やはり研究の面白さを感じますね。
一方で、私は野生魚の繁殖機構に異常があるかどうかを研究しているので、「仮説が証明される」=「魚たちに異常があり、原因が特定された」ということです。野生に生きる魚たちの発する警鐘を受け止め、社会にわかりやすく周知していく役割があると思っています。
- Q 何がきっかけで、その研究をしようと思ったのですか?好きになった、夢中になったエピソード、現在の研究につながるエピソード等を教えてください。
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- 実験室の中で、生まれたばかりの仔稚魚を様々なストレス条件下で飼育すると繁殖機構に異常をきたすことはこれまで色々な魚種でわかっていました。しかし、飼育環境下で起こっている現象が、野生環境下でも本当に起こるのかな?というシンプルな疑問がきっかけです。
そこでまず、実際に野生環境下で高水温ストレスの悪影響を評価してみようと思ったのですが、そのためには研究対象となる魚種の仔稚魚?幼魚を、調査対象エリアで、解析に必要な数だけ捕獲する必要があります。実はこれがとても難しいのです。
例えば、みなさんが普段食卓でみかける魚の生まれたての仔稚魚を野生で見たことがありますか?産卵期になれば生まれたての仔稚魚が野生環境にいるはずですが、どのような魚種であれ、皆さんほとんど見たことがないのではないでしょうか?それは、彼らは捕食者に見つからないように実に巧妙に隠れているからです。
私はトウゴロウイワシ目魚類である「ギンイソイワシ」という魚を国内の研究対象種としていますが、研究を開始した当初は、比較的捕獲が容易な成魚の解析に重点を置いていました。しかし、ある夏の日の夜に、全く別のプロジェクトで、研究室の学生さんたちと小さな漁港に生物採集に行った帰りに、昼間は全く見かけない生まれたばかりのギンイソイワシの仔稚魚が、スロープにたくさん溜まっていることを発見しました。さらに、胴長をはいて周辺の海に入ってみると、海藻の中から寝ぼけ眼のギンイソイワシの幼魚がたくさんでてきて、網で簡単に捕まえることができました。
この偶然の発見により、各年度に生まれた野生のギンイソイワシの仔稚魚?幼魚を解析に必要な数(数百尾)だけ捕獲することが可能となり、研究が一気に進展しました。あの夏の日の夜に、学生さんたちとギンイソイワシの仔稚魚を発見したときの興奮は今でも忘れられません。 - Q その研究はSDGs何番の目標と関わりがありますか?その研究は、社会でどのように役立ちますか。また、どのような職業や仕事に結びつくと思いますか。
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- 生き物好きの学生さんたちと一緒に日々、海に出て、対象となる魚を野外で捕獲し、いろいろな生理学的な分析をして実態を把握する。そうすることで、水圏環境に生息する生き物たちが発している声なきメッセージを読み取ることができます。
最近は地球温暖化や気候変動、環境汚染物質など、生態系を脅かす様々な事象が地球規模で問題となっています。しかし、皆さんの目の前にある海や河川、湖沼に生息する生き物たちに、実際にどれだけ悪影響があるのか、ピンとくる人は少ないのではないでしょうか?
私は、人間活動に起因した様々な環境ストレスに晒されている生き物たちの無言のメッセージを科学的に読み解き、社会にわかりやすくフィードバックし、警鐘を鳴らしていくことが、「海を知り、海を守り、海を利用する」ことがモットーである東京海洋大学に所属する教員?研究者としての大切な使命だと思っています。
- Q 研究者として、今後の目標は何ですか?研究を通じて、これから世の中にどのような「夢」を与えたいですか?現実的でなくても構いません。先生の夢を教えてください。
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- 日々フィールドに出て魚たちと触れ合っていると、大小かかわらず新しい発見があります。有名な科学雑誌に投稿できるような発見もあれば、そうでない時もありますが、その一つ一つが世界で誰も知らないことです。その宝物のような発見を研究室の学生さんたちと分かち合いながら、「野生の魚たちを守るため」の研究活動を続けていきたいと思っています。
- Q 2030年に向けて、これから入学してくる学生さんとどんな研究をしたいですか?
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- 私はフィールドワークが好きですが、それだけでは野生環境で魚たちに何が起こっているのかを明らかにすることはできません。それを証明するために、実験室の中での地道な飼育試験や、ホルモン測定などの内分泌学的調査、遺伝子解析などの分子生物学的調査も不可欠です。
海洋大には海の生物が好きで入学してくる学生さんが多くいます。釣りが好きな学生さん、水辺の生物を採るのが好きな学生さん、中には逆に生き物が苦手という学生さんもいます(笑)。そのような学生さんたちと一緒に「野生の魚たちを守るため」に、時には大海原で網を持って、時には実験室でピペットを握って研究に没頭し、それが結果的に、「水圏生態系を守ること」につながっていけばいいなと思っています。
- Q 1.入学を決めた理由は何ですか。
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- 海洋大の海洋生物資源学科の先生あるあるですが、やはり私も幼い頃から水辺の生き物を採ることや釣りが大好きで、魚の生理?生態に興味があったというのが一番の理由です。
- Q 2.どんな学生時代を送りましたか。思い出に残っているエピソードを教えてください。
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- 1年生から3年生までは釣りに明け暮れていましたね。1990年代初頭はブラックバス釣りが全盛期でしたので、釣竿を何本も持って時間があれば茨城県の霞ヶ浦に通っていました。夜には腾博会官网9885の周りでシーバス釣りもよくやっていましたね。
4年生で研究室に所属してからは「アユの卵成熟機構の解明」というテーマで、初めて“研究”というものに着手しました。当時、研究に使うアユは山梨県水産技術センターから分与していただいていたのですが、思うように実験が捗らず、秋の産卵期が終わってしまいました。その時、当時指導していただいていた先生から、関東ではアユの産卵期は終わってしまったが、九州はまだ終わってないから長崎へ飛べ!という司令が出て、右も左もわからず長崎大学へ3ヶ月間派遣されることになりました。この時、産卵期がある魚を研究に使う際には期限があるということを学びました。また、そこに魚がいなければ自分が動くというフットワークも研究には大切ということを学びました。もちろん長崎は釣りの楽園ですので、釣竿は持っていきました。徹夜でアユの卵母細胞の培養実験をしながら、空いた時間には長崎大学の学生さんたちと一緒にアオリイカや太刀魚釣りにいきました。
研究と釣りを両立したせいで、当時はほとんど寝ていなかったのではないかと思いますが、何も考えずに好きなことだけに没頭できたあの3ヶ月はとても充実した時間でした。そして、長崎出向により私の研究テーマ「アユの卵成熟機構の解明」に不可欠な最後のピースを得ることができて、自分の仮説が証明され、研究論文が完成したときは感無量でした。 - Q 3.海洋大を受験するか迷っている高校生に伝えたいことはありますか。
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- 水辺の生き物が好き、魚が好きであれば間違いない大学だと思います。