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物流を都市計画?交通計画の視点からとらえる

海洋工学部 流通情報工学科 坂井孝典 准教授


物流を都市計画?
?交通計画の視点からとらえる

海洋工学部 流通情報工学科 坂井孝典 准教授

2006年以降、海外で活動を続けてきた坂井先生。昨年帰国し、海洋大の流通情報工学部門で都市?交通計画を研究しています。
全世界で拡がったCOVID-19の影響により、世界中の人々の生活が様変わりしました。Eコマースの普及により物品購入の仕方が変わり、物流が変わりました。物流が変われば、都市のあり方も変わります。日本だけではなく海外の現場で活躍し、現在も海外の研究者と協力して研究を行う坂井先生が、これからの未来を担う若者達に伝えたいことは何でしょうか。


Eコマース:Electronic Commerceの略、電子商取引のこと。例えばインターネットで商品等を電子決済で売り買いするといった物の取引。

坂井准教授

略歴

坂井 孝典(さかい たかのり)
流通情報工学部門 准教授
東京工業大学土木工学科を卒業、
同腾博会官网9885人間環境システム工学科修士課程を修了。
2006年から2007年にかけてカリフォルニア大学アーバイン校へ留学。
2008年より(株)アルメック?海外室にて勤務。
2017年にイリノイ大学シカゴ校都市計画?政策科にてPhD取得。
マサチューセッツ工科大学の在シンガポール研究機関である
Singapore-MIT Alliance for Research and Technology(SMART)を経て、
2021年4月から東京海洋大学流通情報工学部門准教授。

坂井 孝典(さかい たかのり)
流通情報工学部門
准教授
東京工業大学土木工学科を卒業、同腾博会官网9885人間環境システム工学科修士課程を修了。
2006年から2007年にかけてカリフォルニア大学アーバイン校へ留学。2008年より(株)アルメック?海外室にて勤務。
2017年にイリノイ大学シカゴ校都市計画?政策科にてPhD取得。
マサチューセッツ工科大学の在シンガポール研究機関であるSingapore-MIT Alliance for Research and Technology(SMART)を経て、
2021年4月から東京海洋大学流通情報工学部門准教授。

Q 所属する学科はどんな学科ですか?

商品や原料などの「物」の流れというのは、人々の生活や社会の様々な活動と切り離すことができないものです。流通情報工学科はそんな「物の流れ」(=物流)に関する知識や技術を学ぶための学科です。
(研究室にて)
Q どんな授業を担当していますか?

物の流れの在り方は、都市の形成や交通の整備と密接にかかわっています。担当する「流通基盤計画学(流通情報工学科?2年次)」では、都市計画の歴史、都市や交通における物流に関連した課題、計画、統計分析手法について知識を習得することを目標としています。古くから、都市は交通システムの発展と一体となって形成されてきました。例えば、湾岸で工業が発達するのは、輸送コストの低い海運の利用ができ、また、陸上での輸送コストがかからないためです。つまり、物流コストと土地利用には密接な関係があります。さらに、物流の発展とグローバリゼーションは一体です。アジアの途上国の急速な経済発展には、コンテナ輸送による海上輸送の利便性の向上と、国内の基幹交通システム(港湾や高速道路)開発によって、生産拠点が世界的な生産?消費システムにアクセスできるようになったことが背景にあります。授業では、物流?交通システムが都市形成や国際経済の根幹であることや、物流と関連した都市計画にはどのようなものがあるか、日本にはどのような制度があって、将来、何が必要になりそうかを学びます。
Q どんな研究をしているのですか。その研究のおもしろさは、どんなところですか?

物流には、ビジネスの観点から捉えるべき点と公共政策の観点から捉えるべき点がありますが、私は主に公共政策の観点から研究をしています。交通システムの進化と都市との相互関係に焦点を当て、特に、都市物流と土地利用、及び、 都市物流に関するモデル開発?政策分析に取り組んでいます。自動運転車やドローン等の新たな交通モードの普及に加え、世界的なCOVID-19の流行に直面し、諸活動のオンライン化やEコマースの成長が進む中、この分野における研究は益々重要になると考えています。

(2020年米国交通輸送調査委員会における発表会場にて)

(2018年米国TRB都市貨物交通委員会Best Paper Award表彰式にて)

Eコマースについて少しお話すると、欧米や中国ではEコマースの普及が日本より大幅に進んでいます。市場拡大に伴い、都市内の貨物の動き?配送の仕方、それらの効率性や環境への影響について関心が高まり、研究者も増えています。コロナ禍の被害が甚大だった米国では、クラウドを用いた買い物の代行サービスなど、新たな購買システムが急速に普及しました。モバイルキッチンも変化のひとつで、レストランで仕事ができなくなった調理人が住宅街に設置された貸し出しキッチンで料理を作り、配達しています。
COVID-19と似たところがありますが、新たな購買?物流システムは、あるきっかけで世界中に一気に広がるけれど、それぞれの国で法律?規範?文化が違うため、広がり方や定着に違いがみられます。私も、現在、欧米?アジアの研究者たちと共同で、Eコマースの普及に関連した都市物流?土地利用の変化について、世界の複数の主要都市を対象に分析し、社会にとって有益な知見を得ようと試みています。

(相互に関連する三つの研究課題)
Q 何がきっかけで、その研究をしようと思ったのですか?

物流に焦点を当てた研究に取り組むようになる前は、主に東南アジアにおける交通計画の業務に従事していました。途上国が、国際的な物の供給システム(=グローバルサプライチェーン)に参加することによって、急速に産業構造、及び、都市の在り方が変容するのを目の当たりし、物流と物流を支える都市計画や交通システム、また、物流の増加に伴う諸問題に対して取り組む必要があると考えるようになったことは、現在の研究につながる一因であると思います。実際に、物流の分野での研究を本格的に開始したのは、イリノイ大学の都市計画?政策科のPhDプログラムに参加した2013年からです。PhD取得後は、シンガポールにあるマサチューセッツ工科大学の研究所の研究員となりました。

(学位授与式当日、イリノイ大学シカゴ校にて。)
Q その研究はSDGs何番の目標と関わりがありますか?その研究は、社会でどのように役立ちますか。また、どのような職業や仕事に結びつくと思いますか。

「11番 住み続けられるまちづくりを」に特に関連すると思います。都市?交通計画の分野で役立つ知見を生み出しています。もちろん、その分野での職業や仕事と結びつくと思います。都市?交通計画の分野では、自然や人間社会に対する深い理解が必要になります。また、学生の方々が研究を通じて得られる分析、問題認識、問題解決に関する能力は、私の研究分野に限らず、広く社会に役に立つものになると思います。

(学会後、カリフォルニア大学アーバイン校Institute of Transport Studies(2006年-2007年在籍)の旧友たちと)
Q 研究者として、今後の目標は何ですか?研究を通じて、これから世の中にどのような「夢」を与えたいですか。

私には、研究を通じて「夢」を与えたいという意識はありません。研究を通じて、少しでも多く人間社会において広く役立つ知見を生み出したいと思っています。

(2021年まで在籍したSMARTにて集合写真)
Q 2030年に向けて、これから入学してくる学生さんとどんな研究をしたいですか?

私の研究では、物流を都市計画?交通計画の視点からとらえますが、それには、単なる数値的な分析能力だけではなく、物流と人の生活、物流と経済活動、物流と都市の関係について理解を深めることが必要になります。学生さんとは、今後の社会や技術の変化が、物流を通じて人間社会にどういった変容をもたらすか、分析や議論ができればと思っています。

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