講義?ワークショップ等の報告
第2回「高度専門キャリア形成論Ⅰ?Ⅱ」の講義報告です(H27年度)
2015.06.02
平成27年5月28日(木)、腾博会官网9885白鷹館で、平成27年度第2回高度専門キャリア形成論が開催されました。
『未来への挑戦を考える』
垣添 直也 氏(日本水産株式会社前社長、楽水会副会長)
?
初めに、神田室長から高度専門キャリア形成論の趣旨説明がありました。
続いて、竹内学長から「キャリア開発室は事業開始から関わっていた。事業は今後も継続するので期待して欲しい」と挨拶がありました。
次に塩谷特任教授から、本日の講師である垣添氏の略歴について「日本水産(株)の社長を13年務め、日本における水産業の牽引者として活躍された」と紹介があり、垣添氏の登壇となりました。
垣添氏は、「今日は、『未来への挑戦』というテーマで皆さんと一緒に考えてみたい」と述べて、サブテーマの『イメージできないことはマネージできない』について、「イメージするとは、自分がこうしたいということが具体的になっているということ」と説明がありました。
いつの時代も、常に変化している。変化をチャンスとして捉えるために皆さんはキャリアを積んでいる。そして、今を変えることが未来をつくっていくことであり、未来を考えていかないと面白くない。
ここで、『未来を変えようと思えば変えられる』ということについて説明がありました。
高碕達之助、国司浩助、中島董一郎の偉大な3人の先輩たちは、今から100年前の同じ時期に本学で学んでいた。高碕氏は、アメリカから帰国して製罐会社を起業し、缶の形の標準化を実現して生産性と品質の向上を実現した。国司氏は、学生時代からイギリスに行ってトロール漁業を学んだ。24歳の時に、現日本水産の前身である会社を創業し、漁って、加工し、流通までをカバーする世界最大の水産会社に育てた。中島氏は、高碕氏と同年代で仲も良かった。中島氏も、イギリスとアメリカを見てきた。アメリカで出会ったマヨネーズを日本で商品化し、日本の食の洋風化に大きく貢献した。
3人が薫陶を受けた伊谷以知二郎先生の紹介と共に、3人に共通することやそれぞれの信条等が紹介されました。
本学は創業以来「実学の府」であり、時代背景は違うが今に継承されている。「何に挑戦するか」を具体的にすることが大事だと考えている。
次に、海の利用について考えてみたいと述べて、スライドを示して説明がありました。
日本では、生鮮食料品の支出額が減少し、調理済食品へと移行が進んでいる。農林水産業は、国内の新分野や海外市場に挑戦することが期待されている。また、冷蔵倉庫の解凍技術の研究や、海洋再生エネルギーの実験も盛んにおこなわれている。研究が進んでも、実用化しないと産業として成り立たない。また、日本は世界最高の海洋調査能力を持っているが、これを産業化する人が出て来ることが大事だ。机上の研究も大事だが、現場に行って、変化を見逃さず、その変化にどう対応していくかだ。
社長の頃に、毎年新入社員に包丁と砥石とまな板を全員にプレゼントした。これは、常に自分を磨いておいて欲しいというメッセージだった。また、新入社員が毎月一回、社長と直接メールでやり取りができる制度もあった。その時に、「大学でこの研究をしてきたので、この仕事をしたい」という意見が多かった。そういう人には、「自分の将来を狭い視野で決めつけずに、もっと広い分野に挑戦して欲しい」と伝えた。ニッスイは、『自分の成長とチームの成長を、同時に成し遂げて行くことに情熱を持ち続けることができる人』を求めている。
「未来をつくることにはリスクがあるが、未来をつくろうとしないことの方がリスクが大きい」とドラッカーの言葉を引用し、「今日の講義を聞いて、未来が少しでもイメージできたら良いと思っている」と述べられました。
ここで、『未来を作り上げていく』というイメージについて受講者たちと話し合いが持たれました。?
『今の自分で良い』と思ったら進歩が無い、『今の自分を変えてみたい』と思うことが大事だ。思い込みを排除し、意識して見ないと単眼思考になる。まず夢を見て、夢を実現するために何を磨かなければいけないかを考えて欲しい。
最後に、吉田松陰の言葉を引用して、「夢は必要だが、夢だけでは成功しない。皆さんも、ぜひ未来に挑戦して欲しい」と述べて、垣添氏の講演が締め括られました。
続いて、質疑応答に入りました。
Q1: 垣添氏が会社に入社したとき、どういう理想や目標を持っていたのか?また、入社後に、それがどう変わって行ったのか?
A1: 最初は、捕鯨に行った。極限の世界で、たくさん学ぶことができた。その後、捕鯨は禁止されたが、それで私の人生が終わった訳ではなく、新たに社内起業をした。
Q2: 一生の目標にしたいと思っていることは何か?
A2: 国司氏が提唱した『漁業から加工、流通まで』の考え方を、世界レベルのネットワークを構築し、コラボレーションを推進することにより、世界のマーケットに届けて行きたいと考えている。そのために、資源問題は継続してしっかり勉強を続けている。
Q3: 垣添氏の原動力(エネルギー)となっていることは何か?
A3: エネルギーをどう作るかは人それぞれだ。立派な3人の先輩たちと同じに成ろうとしても成れないかもしれないが、成りたいと思うことが私のエネルギーとなっている。そして、それが求心力であり、人の魅力だと思っている。
Q4: 経営者としての長い経験から、どういう人を採用したいと思うか?
A4: マニュアルで学んだことだけでなく、自分の感性を大事にして欲しいと思っている。画一的では、人間として面白くない。学生の間に、自分の夢を簡潔に語り、自分の個性を訴えることが出来るようにしておくことも必要ではないかと思っている。?
最後に、塩谷先生から「皆さんの役に立つお話をたくさん有難うございました」と、講師への謝辞が述べられて本日の講義が締め括られました。
以上