講義?ワークショップ等の報告
第9回「高度専門キャリア形成論Ⅰ?Ⅱ」および第2回「ワークショップと懇談会」の報告です(H27年度)
2016.01.28
平成28年1月22日(金)、腾博会官网9885?白鷹館2Fで、平成27年度第9回高度専門キャリア形成論が開催されました。今回は、第2回ワークショップ+懇談会としての開催でした。
『博士人材、インターンシップで飛躍する!』
【 第1部 長期インターンシップ報告会 】
? 陳 放 さん 博士(海洋科学) 研修先:漁船保険中央会
? 小林美樹 さん 博士(海洋科学) 研修先:株式会社日本海洋生物研究所
【 第2部 講 演 】
? ?~海洋生物研究に懸ける民間企業の社会的使命~
?? 小山利郎 氏 株式会社日本海洋生物研究所 取締役社長
?? ~海洋生物の調査研究と私のキャリア~
?? 高木香織 氏 株式会社日本海洋生物研究所外洋域研究センター 主任研究員
?
神田室長の挨拶で、平成27年度第9回高度専門キャリア形成論(第2回ワークショップ+懇談会)が開始されました。
続いて、司会進行役の塩谷特任教授から最初の発表者である陳 放さん(PD)が紹介され、長期インターンシップでの体験について発表がありました。
中国の大学では英語翻訳を専攻したが、卒業後は別の専門分野に進もうと海洋大の博士課程前期?後期に進学したそうです。
長期インターンシップに応募した目的は、「知識を深める」、「勤勉な日本の職場文化の理解する」、そして「日本語能力を向上する」であった。研修先の漁船保険中央会では、全ての部署で研修することができ、意見交換等を通じて知識を深める機会を得ることができた。
実務に携わったことで、業務の関連性や制度についてより深く理解することができ、研究についての新たなアイデアも生まれた。一方、社員が真面目に仕事に取組む姿や、仕事に対する集中力の高さは、自分自身に大きな影響を与えた。また、日本語の敬語や丁寧語の練習もできた。
学生時代にした全てが自分の能力向上に繋がり、今後のキャリアに活用することができると感じた。
?中国の諺を引用して、「学んだ知識を実務で運用し、実務で学んだ知識を更に深め、そして知識と実務を結びつけることで自分自身が成長する」と纏めました。最後に、婁先生と塩谷先生並びに漁船保険中央会に謝辞を述べて発表が終了しました。
【質疑応答】
Q:なぜ海洋関連に興味を持ったのか?
A:海の近くで育ったため、もっと海について知りたいと思って海洋大を選んだ。将来は故郷に帰って仕事に就きたい。
ここで塩谷先生から、陳さんの研修先である漁船保険中央会の本田常務理事に発言をお願いしました。
インターンシップの受け入れは初めてだった。しかし、中国の保険事情も学ぶことができ、双方に得るものがあったと思っている。大連に帰っても、漁船保険の専門家として活躍して欲しいと励ましの言葉が述べられました。
続いて、小林さん(PD)が登壇し、同じく長期インターンシップの体験について発表がありました。
学位取得後は、神奈川県水産技術センターで臨時職員や非常勤職員をしていたが、専門知識が活かせなかったことや、将来を考えたときに、正社員として働きたいという希望が湧いてきたそうです。
長期インターンシップに参加するためには、現在の仕事を辞めなければならずとても悩んだが、一歩踏み出すことで現状を変えようと思い参加を決意した。
自分が本当にやりたいこと、或はできることは何かを知りたかった。専門知識や技術を習得?向上すれば、今後の就職活動の強みになると考えた。また、民間企業での職場の雰囲気も体感してみたかった。そして何より、自分自身を見つめ直す機会にしたかった。
研修に参加したことで、自分は生き物が好きで、これからも環境に貢献できる仕事に関わっていきたいという気持ちに気づくことができた。また、仕事に関しても、これまでは専門を活かすことに固執していたが、実際の業務では広い視野で見ることが求められていると分かった。
最後に、関係した方々への謝辞が述べられて発表が終了しました。
【質疑応答】
Q:企業の中で、チームワークと報連相が必要となった具体例は?また、研究室との違いは何か?
A:基本的には同じ。会社では、更に規模や責任が大きくなるのでより大切だと思う。
Q:水産技術センターと民間企業の両方の経験を、今後の働き方にどう活かしていくのか?
A:それぞれに良い所があったが、試験場では自分の仕事をこなす感じが強かった。今の会社では、皆で同じものを作り上げていく雰囲気がある。
ここでもう一人、同時期に長期インターンシップを修了したインドネシア出身のアワルディンさん(PD)が、塩谷先生から紹介されました。
既に、研修先である古野電気の東南アジア担当のマーケティングマネージャとして就職が決まっていると説明がありました。そして、3月からはジャカルタに赴任することになっていると本人から挨拶があり、併せて長期インターンシップの関係者に謝辞が述べられました。
続いて、小林さんの長期インターンシップを受け入れていただいた株式会社日本海洋生物研究所社長の小山氏が登壇されました。
?企業から見た長期インターンシップとは、仕事を通してその人の専門性や考え方、或は意欲等々を様々な角度から時間を掛けて見ることができる良い機会だったそうです。
日本海洋生物研究所は、東京水産大のOB2人が、自分たちで好きな海洋生物を研究しようと設立し、今年で43年目になる。会社の中で、自分が突き詰めたい研究だけをやろうとしても無理があり、多くは受注した研究をすることになる。しかし、受注した研究でも、将来の為の自主研究をすることはできる。また、業務の終了後には研究成果として論文に纏めることもできるので、単に仕事をこなすだけではない。会社としても、個人の意欲と好奇心を支える努力をしている。
博士人材の担う役割とは、必ずしも自身の専門性だけでない。特に博士には、研究過程で培ったノウハウ並びにチャレンジする意欲や好奇心等を前面に出して取り組むことにより、良い成果を出すことを期待している。
民間企業でも、海洋生物研究へのニーズが高まっているので、就職先の選択肢の一つとして検討して欲しいと述べて講演を締め括りました。
最後に、同じく株式会社日本海洋生物研究所の高木氏が登壇されました。
修士の時に就活をしたが、研究が面白くなり、内定を辞退して博士課程に進んだそうです。
学位取得後は、水総研でポスドクをすることになった。研究分野に拘りを持たず、興味や関心を広く持つスタンスで研究に臨んでいた。しかし、次第に安定的な雇用を求めるようになり、公的機関に拘らずに水産系の就職先を探していたところ、現在の会社から内定をいただいた。
民間企業といっても、顧客に迎合したり、営業活動をしなければならないということはあまり無かった。大学や学会のように似た人が集まっている環境とは違い、バラエティに富んだ人たちが集まっている。また、年間計画に沿って活動するのではなく、入って来た仕事を顧客の要求に合わせて、皆で協力して結果を出していく。
民間企業での仕事は、大学のように個人の名前で成果を残すのではなく、自社としてまたは顧客として成果を残して行くことだと分かった。大学や研究所で培った様々な経験や調整力は、今の仕事にも役に立っている。そして、それがキャリアの武器になっていく。
民間企業も選択肢の一つとして、就活を頑張ってくださいと述べて講演を締め括りました。
最後に、小林さんの指導教員であった藤田先生から、小林さんの長期インターンシップから就職するまでを支援してきた方々に謝辞が述べられました。
以上でワークショップが終了し、引き続いて企業の方々と学生が交流する懇談会が開催されました。
以上